サマリー
◆新型コロナウイルス感染拡大による労働需要の急減を受け、雇用・所得環境は4、5月に大きく変容した。雇用関連統計を見る限り、多くの企業が就業時間を大幅に調整して、雇用維持に努めているようだ。ただし、こうした中で注意したいのが所得の減少だ。雇用調整助成金の拡充後も、休業手当を受給していない労働者は少なくないとみられる。
◆総就業時間を年齢階級別に見ると、4、5月は若年層で減少が目立った。コロナ・ショックは若年層が多く就業する各種サービス業への打撃が大きく、結果的に若年層の雇用・所得環境の悪化が他の年齢層よりも深刻化した。
◆雇用調整がさらに進むと、離職しやすいのは派遣社員等の有期契約雇用者だ。派遣社員・契約社員・嘱託の雇用者は「非正規」でありながら世帯主であることが多いため、予期せぬ雇止めは世帯単位での生活の困窮に直結しやすい。足元で日銀短観の雇用人員判断DIが急上昇していることに鑑みると、派遣社員等の雇止めは2020年末にかけて本格化していく可能性がある。
◆大幅に悪化した景気の回復に時間がかかれば、有期契約雇用者のほか、正社員など無期契約雇用者の雇用調整リスクも高まる。ソーシャル・ディスタンスの確保で収益率が低下したサービス業では特に雇用調整リスクが大きい。サービス業からの離職者がスキル等の不足を理由に他業種に転職できず、雇用のミスマッチが拡大する恐れがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日