サマリー
◆緊急事態宣言下の厳しい自粛が1カ月延びると、個人消費は4.5兆円程度抑制されるとみられる。報道によると、38県で前倒しの宣言解除が検討されているが、そうなれば個人消費の抑制額は3.7兆円程度に縮小する。感染再拡大のリスクは小さくないため、解除後も不要不急の外出自粛などは継続されると考えられる。個人消費は緩やかな回復にとどまり、新型コロナウイルス感染症発生前の消費水準に戻るにはかなりの時間を要するだろう。
◆「総合経済対策」分を除く緊急経済対策の経済効果は、実質GDP換算で0.8%程度と試算される。3.3%程度とする内閣府の試算値よりもかなり小さい。約13兆円の特別定額給付金の消費喚起効果を低く見積もったことや、最終需要の発現が見込みにくい施策を算入していないことなどが主な理由である。
◆自粛の長期化で打撃を受けやすい飲食サービス業などでは特に、企業の固定費の負担軽減が急務である。このうち雇用調整助成金については、生活給としての役割が特に大きい所定内給与並みの収入を保証する観点から、日額上限を現在の約1.5倍にあたる12,000円程度に引き上げることが少なくとも求められる。
◆感染拡大が6月前後に収束に向かうとの前提の下、日本の実質GDP成長率は2020年度で▲5.8%、2021年度で+3.5%の見込みである。米欧中の経済見通しの悪化などにより、4月8日時点の見通しから下方修正した。一方、2021年初に収束に向かうシナリオにおける実質GDPは、厳しい感染拡大防止策の影響もあって「L字」のような推移を見込んでいる。2022年1-3月期においても、実質GDPの水準は消費増税直前の2019年7-9月期を10%ほど下回るとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
2025年9月貿易統計
トランプ関税の悪影響続くも、円安効果で輸出金額は5カ月ぶり増加
2025年10月22日
-
2025年8月機械受注
非製造業(船電除く)を中心に弱含み、政府は基調判断を下方修正
2025年10月16日
最新のレポート・コラム
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
純債務って何?高市総理が目指す財政指標の意味
2025年10月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

