サマリー
◆新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの人が不要不急の外出を控える中、小売業や宿泊・飲食業といった個人向けサービス産業の業況が大幅に悪化している。賃金・雇用調整を行う企業が急増すれば、感染収束後の個人消費の持ち直しは緩やかなものになろう。
◆個人向けサービス産業は従業員に占めるパートの割合が高いため、パートの労働時間の削減によって人件費を抑える余地が大きい。他方、一般労働者は給与総額に占める所定外給与と特別給与の割合が他業種よりも小さく、景気悪化時には雇用調整が行われやすい。
◆今回の局面において、労働時間や雇用が2008年以降で最悪となった時期と同程度減少する場合、消費関連3業種のパートの労働時間は月1~4時間程度、一般労働者の雇用は18.7万人程度減少すると試算される。消費関連3業種のみで失業率を0.3%pt程度押し上げる計算となるが、過去に例のないペースで業況が悪化している現状を踏まえると、実際は試算結果よりも多くの雇用が削減される可能性がある。
◆4月7日に閣議決定された緊急経済対策により、雇用調整はある程度抑えられるだろう。ただし、雇用調整助成金は申請から支給されるまでには数カ月間かかるとみられ、その間の企業の給与支払いやその他の固定費支払いの負担が懸念される。資金繰りの悪化を抑制するための制度として、実質無利子融資や、中小企業や個人事業主向けの現金給付などの効果が注目されよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月雇用統計
失業者数が減少し、雇用環境の改善が進む
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

