サマリー
◆罰則付き残業規制や年5日の年次有給休暇の取得義務付けなどを含む働き方改革関連法の成立や一部施行を背景として、企業は従業員の働き方を改善する取り組みを強化してきたようだ。正社員(正規雇用者)では、月100時間以上の残業を行う者の数や、平均月間就業時間がいずれも2013年半ば頃から減少傾向にある。とりわけ平均月間就業時間の減少ペースは2018年春頃から明確に加速している。
◆総労働時間(=月間就業時間×雇用者数)を確認すると、正社員の平均月間就業時間の減少ペースが速まった2018年度以降でも、雇用者全体の総労働時間の減少は小幅にとどまっている。企業は正社員の就業時間の削減に取り組みつつ、労働投入量を確保するために非正規雇用者を増やしてきたようだ。この間、実質GDPの代理変数と見なせる全産業活動指数は、消費増税の実施月を除き基調として上昇を続けてきた。
◆就業者数が中長期的に減少する見込みであることに鑑みると、正社員の就業時間を減らす代わりに非正規雇用者を増やすような対応はこれから取りにくくなりそうだ。また、正社員だけでなく、非正規雇用者の平均的な就業時間も減少傾向にある。今後も経済活動を維持・拡大していくためには、労働生産性の向上が必要不可欠になるとともに、働くインセンティブが高まるような制度の構築も重要になると思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月雇用統計
失業者数が減少し、雇用環境の改善が進む
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

