サマリー
◆6月短観では、前回調査(2019年3月)時点と比較して大企業製造業の業況判断DI(最近)は引き続き悪化したものの、大企業非製造業の業況判断DI(最近)は小幅ながら改善し、まちまちな結果となった。大企業製造業の業況判断悪化の背景は主として①中国向けを中心として海外需要の弱さが続いていることと、②5月以降に再度緊張した米中貿易摩擦問題が挙げられる。大企業非製造業の業況判断改善の背景としては①原油価格の再下落に伴う交易条件の改善や②借入金利の一層の低下、③大型連休特需などが挙げられよう。
◆業況判断DI(先行き)は、業況判断DI(最近)とは対照的に、大企業製造業の悪化は止まる見込みだ。本短観の回答期間に米中首脳会談が行われる可能性が高まっていたことも好感されたのだろう。他方で大企業非製造業は大幅な悪化が見込まれている。これは今回、上述の特需等で潤った業種で軒並み反動減が見込まれていることに由来している。加えて、10月に消費増税が行われる可能性が極めて高くなる中、関連業種の業況判断にも悪化が目立つ。総じて言えば、悪化トレンド自体からは脱却できていないものの、業況「悪化」のペースは一旦緩まったという姿が、今回の短観から確認される日本経済・企業の現状だと理解できよう。
◆2018年度の全規模全産業の「設備投資計画(含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)」は、前年度比+6.6%となり、リーマン・ショック以降では最高の数値となった。ただし、前回調査時点の計画からは▲3.5%と大幅に下方修正されている。2019年度の計画は前年度比+2.3%となった。6月時点での前年度比水準としては、絶好調だった2018年度や2017年度の計画よりは低いが、景気の循環的な底付近にあった2016年度の計画よりは強いといった塩梅だ。
◆同様に、足下では労働市場のひっ迫が進行していないことも興味深い。全規模全産業の雇用人員判断DI(最近)は、依然として大幅なマイナス圏での推移となっており、企業の人手不足感は強い。しかし前回調査時点から製造業は+4%pt(需給の緩和)、非製造業も+1%pt(同)となっており、足下では需給のひっ迫は進んでいない。足下の雇用関連統計でも確認されるとおり、企業の雇用意欲は緩やかに減退しているとみられる。こうした動きが今後の家計行動に与える影響には注意しておく必要がありそうだ。
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