2019年5月貿易統計

輸出数量の基調は連休の影響を割り引いても弱い

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2019年06月19日

  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太
  • 小林 俊介

サマリー

◆5月の貿易統計によると、5月の輸出数量(大和総研による季節調整値)は前月比で大幅に減少した。4月の輸出が10連休前の駆け込みによって底上げされた反動の可能性があるが、それを割り引いても基調は弱い。今後は、米国が対中輸入品へ賦課している追加関税がほぼ全ての品目にまで拡大する可能性があり、注意が必要である。

◆5月には米国が2,000億ドル相当の対中輸入品への追加関税率を10%から25%に引き上げており、中国向け輸出への悪影響が懸念されたが、少なくとも5月時点の統計では悪影響は確認されなかった。ただし、アジア向け全体では電算機類の部分品やICなどの輸出が減少している。これらの品目は台湾などアジア諸国・地域経由で中国に輸出されるものも多く、すでに影響が出始めている可能性がある。

◆輸出金額は前年比▲7.8%と前月(同▲2.4%)からマイナス幅が拡大、輸入金額は同▲1.5%と前月(同+6.5%)からマイナス転換した。貿易収支は▲9,671億円と4ヶ月ぶりの赤字となった。ただし、5月は10連休により営業日が前年と比較して少ないことや、輸出の一部が4月の連休前に前倒しされたことの影響が出る可能性がある。だが、4-5月で均した輸出金額の前年同期比は▲5.0%と1-3月期(同▲3.9%)を下回っている。

◆輸出数量(大和総研による季節調整値)は前月比▲7.8%と減少した。輸出数量についても4-5月の平均値は3月と比較して▲1.4%下回っている。地域別では、米国向け(前月比▲7.7%)、EU向け(同▲14.2%)、アジア向け(同▲9.4%)で総じて減少した。米国向けでは、乗用車が全体の減少に寄与した。米国内の自動車販売台数はすでにピークアウトしており、輸出の先行きには注意が必要だ。EU向けでも乗用車が全体を押し下げた。EU向け乗用車輸出はピークアウト感が強まっている。アジア向けでは、半導体等製造装置が特に全体を押し下げており、減少傾向が続いている。

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