現役世代の消費を抑制する将来不安の正体

『大和総研調査季報』 2017年春季号(Vol.26)掲載

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2017年06月01日

  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太
  • 経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

サマリー

現役世代の消費低迷の一因として、将来不安が指摘される。実際、現役世代の家計で貯蓄率が上昇している他、アンケート調査からも、優先順位の低い消費を抑制し、資産・貯蓄の積み上げを優先する様子が浮かび上がる。


現役世代全体では、非正規雇用に関する不安が強く、不安定な雇用・賃金、資産形成に関する社内制度の欠如、過小な人的資本投資が挙げられる。また20 代・30 代は、子育て、教育に関する不安が強く、特に子どもの高等教育機関への進学を目指す一方で、その費用負担増を懸念しているようだ。さらに40 代・50 代では、2000 年代以降、可処分所得が減少したことで社会保障制度への不安を抱く人々が増加したと考えられる。


社会保障と高等教育費用に関する将来不安は、人的資本投資が不足する非正規雇用者の所得不安の影響を受けている。そこで、人的資本投資の費用を企業横断的に分担し、将来不安を緩和していくことも一案である。国家財政はひっ迫しており、財政支出による将来不安の解消は難しい。現役世代は自分の「稼ぐ力」を高め、将来不安に立ち向かう必要があり、政府には、これを阻害する仕組みを変える、働き方改革のような取り組みが求められるだろう。


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