世界経済にとってトランプ政策は凶か吉か

『大和総研調査季報』 2017年1月新春号Vol.25

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2017年03月01日

  • 児玉 卓

サマリー

トランプ氏の米国大統領就任は、世界経済の様相を一変させる可能性を持つ。2017年はドル高、金利上昇などの金融市場の変動を通じたインパクトが中心となろうが、それは日欧を中心とした先進国を利する一方で、新興国経済の足取りを重くしよう。米国の拡張的な財政政策の効果が顕在化する2018年は、先進国、新興国双方が実体経済上のメリットを享受することになろうが、完全雇用近傍での追加的な需要創出が、米国の景気拡大期間を短縮化させるリスクがある。米国景気が悪化に転じる中、財政赤字の拡大が金利上昇を残存させれば、やはり新興国の苦境が深まる。


ドル高がトランプ氏の許容範囲を超えたとき、同氏がどのような政策を志向するかも気掛かりである。極端な保護主義は米国自身を痛めるが、やはり先進国とのリンケージが命綱である新興国が被るダメージは大きい。一方、米国が音頭を取って積極財政の国際協調を取り付けるというアップサイドリスクも存在する。本格的な政治の季節を迎える欧州は、ポピュリスト政党の求心力をそぐという観点から、財政規律への拘泥を弱め、協調に応じる可能性がある。


大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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