サマリー
◆本稿では、2017年4月に予定される消費増税に関する論点を整理した。具体的には、1997年と2014年の増税時における個人消費の動きの違いを財・サービス別に分析し、その違いが生まれた要因を探ったうえで、2017年の増税時に起こりうる現象について考察する。
◆2014年増税後の個人消費の大きな特徴としては、①耐久財の回復力の弱さ、②サービス・非耐久財の下振れ、といった点が挙げられる。サービス・非耐久財の下振れは増税直後から観察された一方、耐久財の回復の弱さに関しては、増税後時間を経て顕在化している様子が見て取れる。
◆2017年4月の消費増税は、増税がない場合と比較して、実質GDPに対して、2016年度=+0.3%、2017年度=▲0.6%程度の影響を与えるとみている。消費増税は駆け込み需要およびその反動減、実質所得の減少という経路を通じて個人消費や住宅投資を大きく変動させるだけでなく、在庫投資や輸入の動向にも影響を与えることとなる。また、軽減税率導入による個人消費の下支え効果は約1.1兆円(2017年度)と試算される。
◆最後に、2017年に消費税率を引き上げる場合に、政府に求められる対応を検討する。具体的には、①増税後のエコポイント制度・エコカー補助金などの消費喚起策の実施、②低所得者向け給付等の強化、といったことが重要であると考える。
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