サマリー
31年ぶりの赤字化をきっかけとして、日本の貿易収支が構造的に変化している可能性について関心が高まっている。貿易収支だけでなく経常収支も赤字化するのではないかという議論も増えている。
貿易収支や経常収支は赤字でも黒字でも問題視される難しさがある。戦後の国際収支をめぐる議論を振り返れば、貿易の利益は大きいこと、輸出は主に世界経済の動向と輸出産業の競争力の2つで決まること、輸入は国内景気と資源価格がポイントであること、自由貿易の価値を認めつつ、それに伴う摩擦に十分配慮すべきことなどが、収支尻を議論するよりも原理的に重要だろう。
名目貿易収支がどのように推移するかは、差し当たり交易条件がカギである。経常収支は所得収支を保守的にみても今後10年間の間に赤字化するとは思われない。もっとも、国内経済の低迷が反映された経常黒字が維持されるのだとすれば、決して望ましくはない。
経常赤字化の懸念は財政問題とも組み合わされて議論されるが、財政問題の本質が経常収支によって左右されるとは思われない。財政問題はそれ自身の問題として、民間経済の活性化と組み合わせて進める必要がある。
貿易収支や経常収支は赤字でも黒字でも問題視される難しさがある。戦後の国際収支をめぐる議論を振り返れば、貿易の利益は大きいこと、輸出は主に世界経済の動向と輸出産業の競争力の2つで決まること、輸入は国内景気と資源価格がポイントであること、自由貿易の価値を認めつつ、それに伴う摩擦に十分配慮すべきことなどが、収支尻を議論するよりも原理的に重要だろう。
名目貿易収支がどのように推移するかは、差し当たり交易条件がカギである。経常収支は所得収支を保守的にみても今後10年間の間に赤字化するとは思われない。もっとも、国内経済の低迷が反映された経常黒字が維持されるのだとすれば、決して望ましくはない。
経常赤字化の懸念は財政問題とも組み合わされて議論されるが、財政問題の本質が経常収支によって左右されるとは思われない。財政問題はそれ自身の問題として、民間経済の活性化と組み合わせて進める必要がある。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

