サマリー
◆海外経済の減速が日本経済の重石となりつつあり、日本の輸出や鉱工業出荷(輸出向け)は横ばい圏での推移が続く。今後は、内需を中心に緩やかな回復を続けてきた日本の生産活動への影響が焦点となっている。中国が2012年5月に打ち出した消費刺激策は、日本の輸出増加などを経由して日本の生産活動に対してプラス方向に作用すると考えられるため、その効果に対する日本の期待も徐々に高まっている。
◆日中国際産業連関表に基づき、中国の消費刺激策が日本の国内生産へ与える効果について試算を行った。主な結論は、(1)中国の消費刺激策が日本の国内生産へ及ぼす効果は小さい、(2)低下傾向にある日本の中国向け輸出の反転材料としても期待しづらい、という2つである。また、日本の国内生産にとっては、中国の消費刺激策よりも公共投資拡大の影響の方が大きいという結果も得られた。
◆生産活動を「国内生産」と「企業生産」という2つの視点から捉えてみると、それぞれ異なるインプリケーションが得られる。中国の今回の消費刺激策が日本の国内生産をあまり増加させない場合でも、中国に製造拠点を構える日系メーカーの生産を増加させる効果は期待できる。現在は国内生産が伸び悩む中で海外生産が増加する傾向にあるが、貿易特化係数に基づく限り、「乗用車」は国際競争力が維持されており、今のところ「悪い空洞化」を心配するような状況にはない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日