サマリー
◆2012年4月17日、経済産業省が鉱工業指数の年間補正を行った。年間補正は年一回実施される定例作業であるが、今回の注目ポイントとして、季節調整を行う際に、東日本大震災後の生産活動の落ち込みを異常値として処理したことが指摘できる。筆者は、(1)これまでと同様に季節調整の「再現可能性」が満たされていること、(2)大震災の影響を異常値として処理したことで鉱工業指数の季節調整値がより実態に近いものになったこと、の2つを評価している。
◆生産指数の季節調整に関して、以下の6つの論点について検討した。(1)異常値による歪みとは何か、(2)大きな歪みが生じる原因、(3)経済統計の再現可能性、(4)異常値自動検出の透明性と客観性、(5)業種別にみた異常値の時期と種類、(6)年間補正に伴う遡及改定期間。
◆当面の検討課題として、(1)異常値処理を行うときに自動検出された結果に手を加えたこと、(2)業種別のデータに歪みが生じている可能性、(3)改定期間が短いために正確さを欠く数値が公表され続けるリスクを抱えていること、の3つが指摘できる。今後とも、経済統計を「作成する側」と「利用する側」がお互いに知恵を出し合って、季節調整の改善に努める必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

