サマリー
◆企業関連の指標は、足下の堅調さを確認すると同時に、先行きの不透明感を感じさせる内容であった。鉱工業生産指数は前月比+1.3%と2ヶ月ぶりのプラスとなった。一方で、製造工業生産予測調査によれば、5月に生産が足踏みする見通しになっており、生産の回復には一服感が見られる。輸出金額は、前年比+5.9%と6ヶ月ぶりのプラスとなった。2011年3月に東日本大震災の影響で輸出が減少したことの反動増に加え、ASEAN向け輸出が増加したことが要因である。機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比▲2.8%と3ヶ月ぶりのマイナスとなったが、均して見れば堅調な推移が続いている。海外経済は不安定な情勢が続くが、エコカー補助金や復興需要などに支えられて、企業関連指標は持ち直していくとみられる。
◆家計関連の指標は雇用・所得・消費環境に緩やかに持ち直しの兆しが見られる内容であった。家計調査の実質消費は前年比+3.4%と2ヶ月連続のプラスとなった。ただし、2011年3月に東日本大震災の影響で消費が落ち込んでいたことに注意する必要がある。消費支出(除く住居等)の季節調整値で見ると、前月比▲0.5%と4ヶ月ぶりに減少している。失業率は4.5%と前月から横ばいでの推移となり、有効求人倍率は前月から0.01pt改善した。所定内給与はともに前年比+0.4%と、47ヶ月ぶりのプラスとなった。先行きは、企業業績の改善を通じて雇用・所得・消費環境は緩やかに持ち直していくとみられる。
◆今後発表される統計では、5月31日に公表される4月の鉱工業生産に注目したい。生産の回復には一服感が見られており、製造工業予測調査によれば5月にも生産は足踏みする見通しである。海外経済は不安定な要素を抱えており、電力問題も夏場に向けて佳境を迎えようとしている。生産は底堅く推移すると考えているが、足下でリスクが高まっているなかで、改善傾向を続けられるかどうかが注目点である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

