サマリー
◆【概況】輸出は市場コンセンサスを上回る:2011年9月の貿易統計は、輸出が東日本大震災後の大幅な減少から着実に持ち直してきていることを確認できる内容であった。輸出金額は前年比+2.4%と2ヶ月連続のプラスとなり、市場コンセンサスも上回った。また、輸出金額の季節調整値をみても、前月比では+2.0%と8月よりも伸び率が拡大した。輸入金額は、資源価格の高止まりや原子力発電所事故・稼働停止問題に伴う代替燃料の需要増加によって、前年比+12.1%と21ヶ月連続のプラス。
◆【地域・品目別動向(名目)】輸送用機器が堅調に回復:主要品目別の輸出金額では、震災で甚大な被害を受けた「輸送用機器」が前年比+5.1%と2ヶ月連続のプラスとなった点が注目される。輸送用機器の生産がほぼ震災前の水準に戻っていることが、輸出の堅調な回復に繋がった形である。「一般機械」が前年比▲0.6%と僅かながらも21ヶ月振りのマイナスとなった点には留意したい。アジア向けが大きく落ち込んでおり、アジア地域の景気減速の影響が出始めた可能性がある。
◆【今後の見通し】海外経済の減速が重石:輸出の先行きは、海外経済の減速が引き続き重石となり、緩やかな回復ペースとなる見込みである。世界景気と為替からみた日本の輸出数量の推計値(当社推計)は、6月に頭打ちしてから4ヶ月連続で低下しており、短期的に日本の輸出が足踏みすることを示唆している。今夏以降の資源価格の調整を受けて、輸入価格の伸びは10-12月期以降に鈍化する見通しであり、それに伴って輸入金額の増勢も一服するとみられる。タイ向け輸出の主要品目では、原料別製品(鉄鋼・非鉄・金属など)、一般機械、輸送用機器の構成比が大きく、当面はこれらが輸出の下押し圧力となる公算である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

