サマリー
◆2023年3月10日、米連邦預金保険公社(FDIC)は全米16位の資産規模(総資産2,090億ドル)である米シリコンバレー銀行(SVB)を管理下に置き、事実上の破綻を宣告した。事の発端は、SVBが資金繰りのため、有価証券運用の一部を占める住宅ローン担保証券210億ドルを売却し、そこで発生した約18億ドルの損失の穴埋めを企図したことにある。
◆SVBに山積していた問題が、なぜ見逃されたかを問う声も多い。とはいえ、SVBの資本は厚く普通株式等Tier1比率の水準も十分であったことを考えれば、規制当局にどれだけ落ち度があったのかを見極めるには時期尚早であろう。ただ一方で、SVBが即時引き出し可能な大口法人預金の大半を金利ヘッジもかけずに満期保有目的債券に投資していた事実は驚くべきことである。欧銀では欧州債務危機を教訓として、有価証券投資には金利ヘッジを多用しており、金利リスクで破綻するという事態に追い込まれることは想定しづらかった。ただSVB破綻を発端に、世界的な金融引き締めを背景に欧銀が持つ債券の含み損への警戒が生じ、欧銀株価は下落した。さらに3月19日にはスイス中銀の仲介により、UBSが危機に陥っていたクレディ・スイスを買収することで合意し、SVB破綻による金融市場の動揺は欧州へと本格的に飛び火した。
◆欧米の中央銀行はこれまで、ノンバンクセクターの隠されたレバレッジを警戒するよう、何度も呼びかけてきた。しかし、今回のSVB破綻は、低リスクとみなされてきた国内債券の金利リスクが危機の原因になるという、思いもかけない事態となった。銀行の危機は、不良債権などによる信用リスクから発生することが一般的で、近年では金利リスクによる危機は稀に見る事態である。現時点では金融システムへの伝播リスクは限られているが、利上げサイクルの終盤には、往々にして金融システムの危機が起こるものである。SVBの破綻は2008年の世界金融危機以降に整備された金融規制のレジリエンスが試される機会になっており、当時のような危機を防げるか否かが注目されている。
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