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対独戦勝記念日での幕引きはならず、長期化が懸念されるウクライナ侵攻

EUの結束もエネルギー禁輸の対ロシア制裁で揺らぎ

2022年05月13日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆5月9日はロシアの対独勝利77周年にあたり、その記念式典でウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」から「戦争」に引き上げるべく、宣戦布告がなされるとの見方も出ていた。しかし、式典でロシアのプーチン大統領は主要な政策を発表はせず、侵攻を正当化するこれまでの主張を繰り返すに留まった。一方、式典の3日前の5月6日に、ウクライナのゼレンスキー大統領は英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)のイベントでオンラインでの講演を行い、停戦交渉の再開条件や、ウクライナの主要戦略目標、さらに英国をはじめとする西側諸国に期待する支援などについて演説した。講演からは短期的に停戦が実現する可能性が低いことが示唆されている。

◆ロシアの莫大なエネルギー収益が戦費に使われているという危機感から、制裁措置としてのエネルギー禁輸の可能性は早くから取り沙汰されていた。ただEUにとって、経済への打撃や、制裁発動に加盟国の全会一致が必要などの理由から、エネルギー禁輸のハードルは高い。5月4日に制裁第6弾パッケージ案の一環として、石油輸入の年内禁止方針を発表した。ロシア産原油への依存度が高いハンガリーやスロバキア、チェコには猶予措置を提案したが、ハンガリーは同国におけるロシア産原油の輸入手段であるパイプラインによる原油輸入は禁輸の対象外にするよう求めるなど、妥協を拒んでいる。

◆欧州にとってロシアの化石燃料への依存脱却は、「If(可能性)」ではなく、「When(いつ)」という時間の問題に移っている。しかし、EUにとってエネルギー禁輸までの前途は多難である。既にロシアからのガス輸入依存が特に高いオーストリアとドイツは4月30日に、ガスの安定確保に向けた「早期警戒」を宣言している。ガスの供給が不足し、企業や市民に対するガス消費の抑制措置が機能しなければ、政府が介入し、配給制が導入されることになる。

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