サマリー
◆2月15日、ロシア下院はドンバス地方の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を正式に国家として承認する採決を行った(賛成351対反対16)。この採決により、ウクライナ政府軍がドンバス地方奪還に向けて両共和国を攻撃したときに、「自国民が住む、親ロシア国家を侵略から守る」という名目でロシア軍が正式に軍事介入できることとなる。当初からNATOはロシアの「両共和国の独立承認」は、ミンスク合意に反すると猛反発していたものの、プーチン大統領は「まだ(独立を承認する)大統領令に署名はしておらず、状況を見極めたい」と駆け引きを匂わす発言をしていた。しかし、2月21日にプーチン大統領は安全保障評議会を開催し、大統領令に正式に署名し独立を承認した。
◆この署名により、「自国民保護」の名の元にロシア軍がドンバス地方に正式に進軍することが可能となった。既にプーチン大統領はロシア軍にウクライナ東部の平和維持を命じており、これを警戒する米英およびEUは、経済制裁を発動する構えである。ただロシアはウクライナの征服を望んでいるわけではなく、その主権を損ない、西側への傾斜を食い止めたいだけである。
◆ウクライナでロシアが武力行使すれば、経済・政治的に多大な代償を支払うことになると米国は何度も警告している。全面侵攻となれば、歴史的に反ロシア感情の強いキエフ周辺を中心に、反対勢力によるゲリラ戦が展開される可能性が高い。これら反対勢力と戦いながら、広大なウクライナの制圧を続けるには相当のコストがかかる。ロシアがそこまでしてウクライナに侵攻するとは思えないとの見方もあり、平和維持活動を命じたプーチン大統領が、実際に全面進軍に踏み切るのかその一挙一動が注目される。
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