サマリー
◆12月16日、BOEの金融政策委員会(MPC)は賛成8対反対1で、政策金利を0.15%ポイント引上げ0.25%にすることを決定した。オミクロン株の影響もあり、金融市場では利上げ見送りのムードが大勢を占めていた中での予想外の引締めとなった。BOEが利上げに踏み切った一因に、12月14日に発表された労働市場データの好調さが大きかったことが挙げられる。10月の雇用は一時帰休スキームの終了にもかかわらず増加し、オミクロン株出現前の雇用市場の堅調さを改めて示した。
◆ECBは12月16日に行われた政策理事会で、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を2022年3月に終了するため、2022年第一四半期に段階的に規模を縮小していく方針を示した。ただECBは欧州債務危機時に時期尚早の金融引締め(利上げ)をし、経済回復を大きく損ねたという批判を集めた苦い記憶がある。そのため、ここ数年超低金利環境と経済成長の低迷に苦しみながらも、金融緩和策の巻き戻しに非常に慎重になっている。
◆オミクロン株の出現によって、経済見通しを巡る不確実性は高まったものの、見通しを大きく変更する必要はなく、経済への影響はそれほど大きくないという楽観的な見方が欧州では増えつつあることも確かだ。これは、先進国ではワクチン接種率が高く、感染拡大が起きたとしても、ワクチンの開発・製造能力を高めることができるうえ、就業パターンを柔軟に適応させることも容易で、感染拡大やロックダウン措置への適応能力がついているためといわれている。現在、主要中銀の大半は既にコロナ危機時に導入された金融刺激策の撤回に踏み切ったものの、需要増加は当面続くことが予想され、2022年もインフレ率の急騰リスクを抱えることが予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日