サマリー
◆現在SPACのIPO規模は5,000万ドルに満たないものから、40億ドルもの巨大なものなど玉石混交である。SPAC上場時は通常のIPOと同様に証券登録届出書の開示が必要となる。ただ空箱であるSPACには、開示すべき過去の決算情報もなければ、(現金以外の)詳述すべき資産もない。届出書では事業に関する記載は必然的に少なくなり、決まり文句の羅列になる一方で、スポンサーや経営陣に関する記載(バイオグラフィ等)が多くなることが一般的である。ただ著名人をスポンサーに据えるなど、本来の投資先選定眼とは無関係な差別化も横行している現状もある。また、買収先については一切白紙の状態で上場されるため、上場時に参加する投資家にとって、投資判断は非常に難航することになる。
◆過熱感のある米国に比べ、欧州市場ではまだSPACに希少性がある。欧州と米国のSPACによるIPOの違いをみてみると、全般的な費用は欧州のほうが安く、上場後の開示要件は米国より寛容になる。今後欧州でもSPACがブームになるかどうかは、目論見書を承認する規制当局の見解やそれぞれの市場における上場規則、SPACの特徴を実現させるうえでの企業を巡る柔軟性に依存することになる。欧州の金融規制は米国に比べ投資家に対する柔軟性に欠けている。国によっては買収先発表後の投資家の償還権行使が確保されていない場合もある。
◆日本では、2021年3月の政府の成長戦略会議で、新興企業支援策の一環としてSPAC解禁が検討されていることが明らかとなった。課題は山積しているものの、このまま有望なベンチャー企業を米国市場に総取りされないためにも、各国は環境整備を急いでいるのが実情である。4月13日には、Uberの東南アジア版ともいうべきシンガボールのGrabが、米国SPACのアルティメーター・グロースとの約400億ドル規模の合併に応じるなど、今後、米国のSPACが、アジアの有望ベンチャー企業にさらに触手を伸ばすことも十分予想される。既に日本のベンチャー企業をターゲットとしたSPACが米国でも上場されており、残された時間は少ないという危機感が日本の市場にはある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利上げ後、状況が一変
原油価格下落で追加利上げは様子見/スターマー首相辞任後の注目点
2026年06月23日
-
欧州経済見通し 家計主導の景況感悪化
製造業では駆け込み需要が下支え/英国では政治不安がリスクに
2026年05月27日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 市場予想に反して減速
かろうじてプラス成長も、原油高の悪影響本格化の前から成長停滞
2026年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

