マイナス金利の深掘りで起こる欧銀経営の変化

欧銀苦境から見える邦銀への教訓

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2019年09月26日

サマリー

◆10月31日に退任が予定されている欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、9月12日の政策理事会で、フォワードガイダンスの変更も含めた大規模な緩和パッケージを発表した。今後、インフレ見通しが目標値のレベルに収束するまで、現行あるいはそれより低い水準に政策金利をとどめるとのECBからのメッセージは、欧銀にとって、当面厳しい経営環境が継続することを意味する。

◆欧銀は、金融危機後に米銀が経験したような厳格なストレステストをすることもなく、問題の先送りに終始し、経費削減や非効率なITインフラの改善、高い費用を伴う支店網のリストラを怠ったことが、経営不振につながっている。また国際的に活動する投資銀行業務を抱える欧銀の中でも、特に大きく収益性が低下したのが、大規模なトレーディング事業を展開していた銀行である。

◆英国やドイツでは、近年設立されたスマホなどのモバイルバンキングを専門とする、一般にチャレンジャーバンクと呼ばれる銀行のシェアが大きく拡大している。チャレンジャーバンクの大半はまだ十分な利益を計上できていない段階にあるものの、従来銀行のような、旧態依然としたコストを増加させる圧力はない。さらに、EU規制により欧銀はオープンAPIが義務付けられており、従来銀行はチャレンジャーバンクの存在を無視できない状況にある。

◆現在の邦銀は、国内企業向け融資という現状維持からシフトし、海外金融機関の買収などにより、新たな収益の活路を海外に求めているケースが多い。(海外業務に活路を求め)国際的な投資銀行の買収や合併により、米銀と伍していこうとしたことが結果的に裏目に出た、ドイツの銀行の事例は他山の石となるだろう。

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