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ジョンソン首相による合意なき離脱のリスクシナリオ

既にその確率は70%近くまで上昇か?

2019年08月13日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆ジョンソン政権が成立してから間もないにもかかわらず、合意なき離脱を阻止するための不信任決議、解散総選挙の可能性が浮上している。8月の下院補選で保守党と民主統一党(DUP)による議席数は過半数をわずか1議席上回っているにすぎなくなったうえ、国民投票実施を求めている少数派の保守党議員のうち、自由民主党への移籍を検討している議員がいるため、下院における過半数の地位を失う可能性が現実的に生じている。 

◆2011年議会任期固定法では、不信任決議可決後、14日以内に議会の信任を得た代替政権が樹立されなければ、その後、25平日前に総選挙を実施しなければならない。ただし、総選挙の日程を女王に進言するのは首相の権限である。仮に総選挙を実施しなくてはならない25平日前が(離脱前の)10月31日以前となろうが、ジョンソン首相は「慣習」を無視して、11月以降の選挙日を設定して合意なき離脱を実現させる可能性がある。

◆強硬離脱派が多く名を連ねる閣僚を見ても、ジョンソン首相が合意なき離脱に突き進んでいることは自明であろう。憶測されているように、離脱日前の総選挙や超党派の政権を防ぐ、あらゆる奇策が駆使された場合、野党が合意なき離脱を防げる勝算は現実には低い。10月31日までに野党側が有効な対抗策を講じることができなければ、英国は合意がないままEUを離脱することになる。現段階では合意なき離脱の可能性が相当高まりつつあり、EU側が妥協しなければ、既にその確率は70%近くまで上昇したと言っても過言ではないだろう。

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