新決済通貨リブラの衝撃

ブレトンウッズ体制崩壊以来のパラダイムシフトか?

RSS

2019年07月23日

サマリー

◆2019年6月中旬に米大手SNSのフェイスブックは、複数のコンソーシアムチェーン会員と共に、新決済通貨リブラを2020年に発行開始することを発表した。リブラの管理・運営は非営利団体のリブラ協会(本拠地スイス・ジュネーブ)が行う。

◆リブラのコンソーシアムチェーン会員は、決済システムの開始にあたりリブラの準備資産に出資することが求められる。会員の大半は、(非営利団体ではなく利益を追求する企業のため)準備資産への投資からの金利収益を期待している側面がある。準備資産が巨大になれば、リブラの政策は各国中央銀行の金融政策にも影響を与える可能性がある。リブラ白書には金融政策を行使しないと明記しているが、これは現時点のスタンスであるにすぎない。わざわざ金融政策に言及するということは、リブラが金融政策を実施するだけのキャパシティを持つことを認めていることを意味する。

◆G7ではステーブルコイン作業部会による議論が行われ、その暫定報告書が発表された。同作業部会の勧告を含む最終報告書は、IMF世銀年次総会のタイミングまでに発表が予定されている。長い協議を経て、IMFが創造した特別引出権(SDR)にリブラを例える向きも多いが、準備資産によって裏付けられ、交換媒体として用いられるという点でSDRとは異なる。リブラ協会は発行したリブラ白書内でリブラを金本位制に例え、リブラ保有者がそのデジタル通貨を実際の通貨に変換することができるとし、安全性を強調している。また、金ではなく変動制の低い銀行預金や、安定した通貨建ての短期国債などで裏付けられ、いつでも交換できることで金本位制よりも優れていることを示唆している。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。