サマリー
◆英国のEU離脱(Brexit)は19年3月29日を離脱期限としながらも、その期日は先延ばしされ、まだ実現には至っていない。しかし、Brexitは既に様々な影響を及ぼしている。本稿では、Brexitが英国の賃金上昇率に与える影響を考察し、今後の動向を示してみたい。
◆英国の賃金上昇率は労働市場の逼迫によって17年以降加速傾向にあり、18年11月-19年1月平均は前年比+3.4%と高水準で推移している。この間のセクター別寄与度の推移を見ると、専門・科学・技術サービス、保健衛生・社会事業、宿泊・飲食、運輸・保管など、欠員率が高いセクターで拡大していた。
◆まだ行く末が未確定であるBrexitは、賃金上昇率の決定要因である労働需給に対して既に影響を及ぼしている。「仕事関連」で英国に流入する移民は、EU移民の大幅な流出が主因となり、減少傾向が続く。労働力率は統計開始以来の最高まで高まっており、今後の労働供給余力は限定的であろう。他方、17年以降の賃金上昇率の加速に大きく寄与したセクターでは、Brexitの影響により労働需要が高まっている。例えば、保健衛生・社会事業及び宿泊・飲食セクターではEU移民の流出により就業者数が減少、運輸・保管セクターでは「物流の停滞」への備えから、労働需要の高まりが見られる。欠員率が非常に高水準で推移する中、労働力不足は賃金上昇率が高止まりする主要因になると考えられる。
◆一方で、Brexitは英国の労働需要を後退させ、賃金上昇率を抑制する要因にもなりえるはずである。実際の悪影響はまだ確認されていないが、企業の雇用意欲の減退を示すサーベイが増えてきている。Brexitが英国の景気を大幅に減速させ、企業が実際に雇用の抑制に舵を切った場合、欠員率の低下ひいては賃金上昇率の減速を余儀なくされるであろう。
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