サマリー
◆ユーロ圏の4-6月期の成長率は、建設投資と個人消費が牽引役となって1-3月期と同じ前期比+0.4%程度になったと推測される。年初から軟調だった鉱工業生産も5月には反発した。ただし、先の読めない貿易摩擦問題が影を落としており、製造業を中心に企業景況感は悪化傾向にある。米国と中国が制裁関税の応酬を続けていることに加え、米国が自動車の輸入関税引き上げを検討しており、ユーロ圏企業は間接的、あるいは直接的な悪影響を懸念している。「貿易戦争」に勝者はいないとされるが、震源地の米国経済が(まだ?)好調を維持している中で、ユーロ圏の景況感悪化が目立つのは、ユーロ圏の輸出依存度が高く、世界貿易の伸び鈍化により敏感なためと考えられる。
◆英国の成長率は1-3月期の前期比+0.2%から、4-6月期は同+0.4%程度に加速したと推測される。牽引役はやはり個人消費である。英国でも貿易摩擦は景気の懸念材料だが、最大の不透明要因はEU離脱(Brexit)の行方である。メイ首相が7月6日にEUとの良好な関係の維持を重視する「ソフトな」離脱方針を提示して閣議の了承を得たことで、膠着状態にあるEUとの交渉が動き出すと期待された。しかし、この新方針はデービスEU離脱担当相とジョンソン外相というEU強硬離脱派の辞任を招いただけでなく、ハードな離脱とソフトな離脱の支持者が保守党内及び議会内で引き続き拮抗していることと、その中でEU離脱方針を打ち出すことの難しさを改めて印象付けた。英国とEUとの離脱交渉はこの秋に最大の山場を迎えるが、「EUとの合意なしの離脱」の可能性が高まっているのではないかと懸念される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日