サマリー
◆快晴だったユーロ圏経済の見通しがにわかに曇ってきた。生産、輸出、消費が総じて冴えず、2018年1-3月期は2017年の高成長から減速したと推測される。景気指標の悪化が目立つのがユーロ圏主要国の中で輸出依存度の高いドイツで、ユーロ安の追い風がなくなったことが影響しているとみられる。加えて、米中の貿易摩擦の高まりやシリアに対する米英仏の空爆など、世界貿易の先行きを懸念させる出来事が続いており、今後の見通しを暗くしている。もっとも、ユーロ圏の雇用は改善傾向にあり、家計の所得環境は良好なことから、ユーロ圏景気はより緩やかなペースにはなろうが拡大基調を維持すると見込む。また、ユーロ圏のインフレ率の加速はごく緩やかで、ECBは「非伝統的な金融緩和」からの出口戦略を慎重に進めると予想される。
◆英国経済は引き続き薄曇り。失業率低下と賃金上昇率加速を追い風に個人消費がいくらか持ち直すと期待される一方、ユーロ圏同様、外需に関して不透明感が高まっている。また、Brexit(英国のEU離脱)実現のための交渉時間が限られているにもかかわらず、英国政府や議会においていまだ大きな見解の相違があり、英国がどのようなBrexitを目指そうとしているのか明確ではない。ところで、Brexit決定に伴うポンド急落によるインフレ圧力が剥落したことで、3月の消費者物価上昇率は前年比+2.5%に一段と減速した。早ければ5月に追加利上げする意向を示してきた英中銀(BOE)にとって、利上げに踏み切るための根拠が弱まったと判断される。
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