サマリー
◆イングランド銀行(BOE)が5月の金融政策委員会(MPC)で発表した、楽観的な経済成長やインフレ率の見通しを信じる向きは少なく、次回会合(8月3日)時に発表される(最新の経済見通しや)金融政策の行方が注目されている。ただ市場では、次回会合では約10年振りとなる利上げには至らないと見ており、BOEが金融引き締めに転ずるにはまだ時間を要すると予想する向きが多い。
◆過去の金融危機発生に共通するパターンとしては、最初に、①急激、かつ持続的な不動産および金融資産価格の上昇が起こる。次に②不動産など資産価格の上昇と関連して債務が拡大する(不動産価格の高騰は融資における担保価値の上昇を意味し、信用へのアクセスが良くなることで購買力が拡大)。その後、③融資が銀行預金を上回るペースで増え、銀行は融資増大に対応するために、(短期の)市場からの資金調達への依存を高めるようになる。このサイクルがある程度続くと、金融システムは脆弱となっていく。
◆ただ過去の金融危機発生は、過剰な企業向け融資が一斉に不良債権化することがトリガーとなったケースが多く、家計債務が金融危機の源となったことは少ない。2008年に顕在化した米国のサブプライムローン問題も、本質的には、証券化商品全体の信用問題がその源にあるとされる。それでも、家計債務の増大で金融危機に陥った国として1990年代初頭のノルウェーなどの例も存在する。当時のノルウェーでは、家計が過剰な債務を縮小するために、消費抑制を余儀なくされたことが危機の発端になったといわれている。
◆家計債務発の金融危機がもたらすリスクは、その直接的な損失というより、突然の家計の消費行動変化が結果的に経済成長に大きなインパクトを与え、銀行に甚大な損失を生み出す。これまで大規模な非伝統的金融政策の解除を経験したことがない金融市場において、仮に各国中央銀行が同時に出口に向かったとして、次に何が起こるかは誰も予想がつかない。ただ、次に起こる金融危機が家計債務発になると予想するのであれば、それに対してはこれまでとは異なる監視が必要となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 仏財政不安、長期化の覚悟
国民世論の二極化で、決められない政治が続くリスクが高まる
2026年10月22日
-
欧州経済見通し 足元堅調もリスクは下向き
長引くインフレリスクと強まる金利上昇圧力
2026年09月17日
-
欧州経済見通し 引き続きインフレに警戒
猛暑で高まるインフレ上振れリスク
2026年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

