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英国総選挙後のブレグジット交渉の行方

国民投票から1年経つも視界不良が続く

2017年07月03日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆6月29日、保守党の施政方針が英国下院で可決され、メイ首相は民主統一党(DUP)との閣外協力を経てようやく少数与党政権樹立に至った。DUPはEU懐疑政党であり、保守党との協力は自然な流れとなるが、今回の閣外協力は、あくまで政府信任や予算、重要なブレグジット関連法案といった主要法案の議決においてのみ保守党を支持する合意である。総選挙での大敗を受け、強硬離脱を目指していたメイ首相は、ソフト・ブレグジットへの方針転換を迫られていることは確かだ。


◆シティの金融機関関係者の多くは、保守党の政権基盤が弱まったことが、ソフト・ブレグジットを招き、当初の想定よりEUへの移動規模を少なくできる朗報を期待していた。ただ現時点では、シティの金融機関関係者の多くは、今回の総選挙結果は拠点移動に関しての影響は軽微という結論に達しつつある。単一市場へのアクセスの維持はすでに絶望的であり、シティでは強硬離脱に備えて事業移転準備を整えている機関が多いのが現状である。


◆最終的な欧州大陸への移動人数は、欧州銀行監督局の移動先などに依存しているとされる。そのため、40万人といわれているシティの金融機関関係者が何人、移動するかは未知数といわれている。ただユーロ建て取引の清算機関の移転を伴う場合は、大規模な人数の移動が伴うとされている。ロンドンは、全世界のユーロ建てデリバティブ商品清算の4分の3を担っており、英国がEUを離脱すれば域外国でその大半の清算を行うことになり問題視されている。


◆前回、英国で少数与党政権が誕生したのは、1974年3月の労働党のウィルソン政権まで遡る。長期的な政権とは受け止められておらず、政権発足のわずか7ヵ月後にやり直し総選挙に追い込まれている。今回、かろうじて少数与党政権を樹立したものの、メイ首相は、不必要な選挙で大敗を招いた責任を問われる形で党首交代を迫られ、再選挙に至るのではという声が日増しに高まってきている。

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