サマリー
◆4月23日に行われたフランス大統領選の第一回投票は、中道派En Marche!のエマニュエル・マクロン候補が得票率24.0%で第一位、反EU、移民排斥を掲げる極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が同21.3%で第二位となり、決選投票進出を決めた。今回の投票でマクロン候補は866万票を獲得し、ルペン候補の得票数(768万票)に100万票の差を付けている。ただ投票者のほぼ半数が反EUを標榜する候補に投票したことは重要な事実として認識すべきだろう。
◆第一回投票後にマクロン候補が、既に大統領就任が決まったかのような演説をし、その後パリの老舗高級レストランでの盛大な祝賀パーティーをしたことに、現地メディアからも手厳しい批判が噴出している。政党として公式オフィスすら持たないマクロン候補が率いるEn Marche!は、草の根ボランティアに支えられている。政党助成金を受け取っているわけではなく、選挙資金も支持者からの寄付金などで賄っている状況での派手なふるまいに、イメージダウンも避けられない。
◆EUやドイツをはじめとする加盟国で第一回投票の結果が歓迎されていることには違いないが、投票者の半分近くが反EU・反グローバル化を標榜する候補者に票を投じたことは今後の懸念材料となる。マクロン政権がオランド大統領やサルコジ前大統領の様な国民からの大幅な支持低迷の結末を辿れば、度重なるエリートへの幻滅から2022年の次期大統領選において、反体制を掲げるルペン氏が大統領に選出されるリスクが高まることになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日