英国から金融機関の大脱出が始まるのか?

ハード・ブレグジットのクリフ・エッジ(急変)を意識するシティ

RSS

2017年01月17日

サマリー

◆英国では、EUからの強硬離脱(ハード・ブレグジット)の機運が高まりつつある。メイ首相は、2017年1月8日のテレビ番組のインタビューの中で、EUと英国にとって最善となる関係性構築を目指すものの、EU加盟維持に関心はなく、移民政策に関する主権を取り戻すことが、ブレグジット交渉において最優先課題と発言した。1月17日に予定されているメイ首相の演説では、この強硬離脱姿勢を政府方針として、正式に発表する可能性が高く、市場はその内容に大きな関心を寄せている。


◆金融街シティの主要業界団体であるTheCityUKによる要望書の中で、金融セクターのEUパスポート制維持を断念し、MiFIDⅡの同等性評価獲得に目標を転換したことが明らかにされている。この対応を受け、英国の金融サービスセクターは、単一市場へのアクセスにおいて、著しいクリフ・エッジ(急変)に直面する可能性があることを警戒している。多岐にわたる金融サービスのEU単一市場へのアクセスにおいて同等性評価に頼ることはリスクが高く、商業銀行業務や保険業など、同等性の枠組みが存在しない分野もあり、英国金融機関の中には同等性の獲得に消極的な向きも多い。


◆トランプ次期米国大統領は、1月16日の英国メディアとの初めてのインタビューで、EUからの離脱を図る英国は非常に賢明であると称賛し、1月20日の就任式典後、米英間の貿易協定締結に向け迅速に対応することを約束した。ただし英国は依然として(2年後の離脱まで)EU加盟国であるため、技術的には難しいことは誰の目にも明白である。さらに米国自体もEUと、EU米国間・包括的貿易投資協定(TTIP)について4年越しの協議を続けており、(それでも英国を優先するのかも含めて)明確な立場を表明していない。貿易協定締結は5年以上かかるケースも多々あり、感情を前面に押し出した交渉は、実現性に疑問符が付かざるを得ない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。