イタリア銀行問題が公的資金注入で決着に

モンテ・パスキの問題を政治リスクに波及させない方針

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2016年12月28日

サマリー

◆2016年12月22日、イタリア政府は緊急閣議を開き、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)などへの公的救済を承認する政令を成立させた。モンテ・パスキはECBから課されていた12月31日を期限とする民間セクターによる50億ユーロの増資を目指していた。ただ個人等からの債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)や、中核的投資家からの調達を合計しても25億ユーロしか集まらなかったといわれており、増資は失敗に終わり政府に公的救済を求めることとなった。


◆今回、イタリア政府が承認した公的救済はEUの銀行再建・破綻処理指令(BRRD)の予備的資本増強といわれている。この予備的資本増強を活用すればシニア債はベイルイン無しで公的資金注入を認めることができる。さらに今回重要であるのは、この予備的資本増強を使用すると同時に、同行の(ベイルイン対象の)劣後債の投資家に対しても、イタリア政府が補償を与えることである。


◆欧州委員会がこのイタリア政府の公的救済を承認するとなると、2016年のBRRD発効以来、初めて例外条項を認めることを意味する。ジェンティローニ内閣が、EUから国民の痛みを伴わない公的救済の承認を取ることができれば、政治リスクが高まることはない。逆に国民が損失負担ということになれば、庶民の怒りは、再度、反EU政党支持拡大につながる恐れがある。

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