サマリー
◆11月8日に米国の大統領選が実施され、フロリダやオハイオ、ノースカロライナなどの激戦区を制したドナルド・トランプ候補が勝利した。今回のトランプ候補の勝因として、(英国のブレグジットの際と同じように)グローバル化の名の下、経済移民による賃金下向き圧力や、技術革新のスピードについていけない労働者階級が、実感なき景気回復に嫌気が差し、体制側への批判票をこぞって投じた可能性が指摘されている。
◆タブーをものともせず庶民の本音に迫り、国内重視を公約するトランプ候補の勝利は、ポピュリズムをさらに刺激し、間近に迫ったEU加盟国内の選挙結果にも波及する可能性が高い。EU加盟国は、選挙に勝つためにも、EU加盟国以外での協定などのコミットメントをなるべく軽減し、保護主義を掲げ、内向き志向を強める可能性が高い。それに加えて、英国に続きEU離脱の機運を醸成しないためにも、これら加盟国は英国に対して単一市場へのアクセスを拒否することを余儀なくされる。
◆EU加盟国の政権与党は保護主義的で内向きな政策を優先しなければ、今後予想される極右政党の台頭を抑制できない可能性が高い。英国のように自由貿易よりも移民抑制を重視する国内優先の動きを容認しない限り、政権を維持できない可能性すらある。いうなれば、英国のようにEUを離脱してハード・ブレグジット(強硬離脱)を選択する姿が、これからのニューノーマル(新常態)となる可能性を秘めている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日