イタリア危機のリスクシナリオ

不良債権だけが問題の本質ではない

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2016年09月21日

サマリー

◆欧州では向こう9ヵ月間に、政権の命運を握る国民投票や総選挙が目白押しであり、政治リスクが高い不透明な時期が続くとみられる。特に注目されているのは11月中旬から12月初旬を目途に実施される憲法改正を問う国民投票を控えたイタリアであろう。投票実施が公表された2016年1月から、レンツィ首相率いる民主党の支持率はじりじりと下がり、それとともに憲法改正支持も低下している。


◆イタリア政府は(モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの救済基金を念頭にした)不良債権買い取り基金第2弾のアトランテ2の資金調達を急いでおり、国内外の投資家から資金拠出を広く募っている。ただ意外にも調達は順調に進み、8月中旬の段階では基金稼働に必要とされる約17億ユーロを確保し、9月末の第一回目のファンドレイズの締め切りまでに25億〜30億ユーロを調達する見込みである。


◆イタリア銀行の問題の本質は不良債権比率の高さだけではない。マイナス金利が収益を圧迫するなか、長年の課題である業界再編が必要性が改めて高まっている。レンツィ首相が実施した銀行改革は、着手の時期が遅すぎ、効果も少ないとの批判にさらされていた。イタリア全国で銀行支店は3万を超えており、支店の半減と15万人に上る従業員の削減が急務と言われている。

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