一時的な財政政策の協調よりも領土問題の解決で景気対策を

安倍首相欧州歴訪の最も大きな成果

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2016年05月12日

サマリー

◆安倍首相は、日本で行われるG7主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の地ならしもかね、2016年5月2日~6日までの日程でロシアを含む欧州主要国を歴訪した。ただし、今回の一連の安倍首相歴訪に関して欧州メディアの取り扱いは小さく、ドイツでは現地紙の報道がほぼゼロと、日本への関心の低さを示す結果となった。英国メディアにおいても同様であり、国賓待遇で報道の多かった昨年秋の習近平国家主席の訪英時と対照的であった。


◆英・独と主要国から協調した財政出動への賛同を得られず不発に終わったといえる欧州歴訪であるが、最後に訪問したロシアでの会談は非公式といえども実り多いものとなった。特に安倍首相から提示された領土問題に係る「新アプローチ」は今回の会談の重要性を一層引き立たせるものとなった。同アプローチの詳細に関する発表は日ロともに報道官から手控えられているが、領土問題解決に向けた具体的な打開策が明記されていることに疑いはない。


◆低インフレ、低成長から脱却できていない経済状況の中で、北方領土問題の解決が、ロシアへのインフラ輸出・新規投資の創出といった観点から、日本経済にとっての大きな需要喚起とされ、アベノミクスへの追い風となる可能性も高い。ソチでの日ロ首脳会談は数年にわたり協議を続けた事務方の努力の賜物であり、日本はロシアの中国接近を牽制する意味でも今回のロシア訪問は大きな目的に向けた一歩を踏み出した会談となった。

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