サマリー
◆安倍首相は、日本で行われるG7主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の地ならしもかね、2016年5月2日~6日までの日程でロシアを含む欧州主要国を歴訪した。ただし、今回の一連の安倍首相歴訪に関して欧州メディアの取り扱いは小さく、ドイツでは現地紙の報道がほぼゼロと、日本への関心の低さを示す結果となった。英国メディアにおいても同様であり、国賓待遇で報道の多かった昨年秋の習近平国家主席の訪英時と対照的であった。
◆英・独と主要国から協調した財政出動への賛同を得られず不発に終わったといえる欧州歴訪であるが、最後に訪問したロシアでの会談は非公式といえども実り多いものとなった。特に安倍首相から提示された領土問題に係る「新アプローチ」は今回の会談の重要性を一層引き立たせるものとなった。同アプローチの詳細に関する発表は日ロともに報道官から手控えられているが、領土問題解決に向けた具体的な打開策が明記されていることに疑いはない。
◆低インフレ、低成長から脱却できていない経済状況の中で、北方領土問題の解決が、ロシアへのインフラ輸出・新規投資の創出といった観点から、日本経済にとっての大きな需要喚起とされ、アベノミクスへの追い風となる可能性も高い。ソチでの日ロ首脳会談は数年にわたり協議を続けた事務方の努力の賜物であり、日本はロシアの中国接近を牽制する意味でも今回のロシア訪問は大きな目的に向けた一歩を踏み出した会談となった。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年の欧州経済見通し
不確実性低下、財政拡張で景気回復ペースは再加速へ
2025年12月23日
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
最新のレポート・コラム
-
議決権行使助言業者の新方針:2026年以降ジェンダーや長期在任の基準厳格化
ISSとグラス・ルイスが2026年以降に適用開始となる議決権行使助言の新方針を公表した
2025年12月26日
-
家計金融資産の運用リターンの日米比較
運用リターンの日米格差は現在27倍も、「貯蓄から資産形成へ」のさらなる進展で格差縮小の可能性
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
2026年の米金融政策の注目点
利下げタイミングや回数、中立金利の変化、次期議長の影響に注目
2025年12月26日
-
2026年、高市政権の課題
2025年12月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

