サマリー
◆2016年4月21日、欧州中央銀行 (ECB) の定例理事会後の記者会見に対する、市場の関心は、“ヘリコプターマネーが政策ツールに加わる可能性”と、“さらなるマイナス金利幅の拡大があるか”の2点にあった。ヘリコプターマネーに対しては、ドラギ総裁は前回の理事会で「興味深いコンセプト」と発言したため、これが具体的に金融政策のツールとして加わるかが焦点となっていた。
◆欧州銀行は、マイナス金利により貸出金利回りを高めることができず、金利上昇リスクに怯えながら、利益を高める方法を模索している。欧州銀行経営の方向性が明確にならない要因のひとつは、マイナス金利の副作用の顕在化だろう。これ以上の長期固定貸出増加を抑制したいスイスの市中銀行は、年初から(長期固定貸出の)住宅ローン金利をあえて引き上げ始めている。マイナス金利政策により、貸出利回りを低下させ貸出を増加させるという政策当局の意図とは逆の副作用が生じている状態を意味する。
◆副作用はあるものの、金融政策の一環としてヘリコプターマネーを政策オプションとして検討する余地はある。ECB内で議論されていない以上、現行の金融政策の継続だけでは、インフレ率と経済成長率が高まる可能性は限界に近づいているといっても過言ではない。
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