サマリー
◆日銀のマイナス金利導入を受け、既にマイナス金利下にある欧州銀行の経営が注目されている。現在の欧州銀行は、不正行為に対する罰金が年々増加し、リストラ費用が重荷になるなど収益力の回復に明るい兆しが見えてこない。一方、危機の震源地である米銀は早期のリストラが功を奏し現在では好調な業績を維持しており、それに比較すると欧州銀行の収益性の回復は見劣りする。
◆欧州銀行と一括りに言っても、その属性は二極化している。米銀と同様に早期にリストラや資本増強に着手した銀行と、機を逸し未だに業務縮小を強いられている銀行とに大別される。しかしながら、マイナス金利が銀行収益を過度に悲観視させ、銀行セクターへの信頼性を損なっているのは言うまでもない。このため2015年は好調な欧銀も含めて再度リストラが相次いだ。
◆欧州銀行が懸念すべきなのはマイナス金利ではなく、危機後の改革の遅れと、行き過ぎた規制強化への対応といえよう。一方で、2016年の欧州銀行は、企業文化変革に着手した分岐点となる見込みが高い。危機後もLibor問題や外国為替の不正操作などスキャンダルが続いたが、2015年はリストラの断行とともに多くの銀行で新CEOが就任するなど、短期主義がはびこる企業文化への決別が期待されている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
米国大手小売店の決算にみる、DEI施策の取り下げと売上高・株価の関係
2025年06月06日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日