サマリー
◆3月13日に行われたドイツの3つの州議会選挙で、メルケル首相の難民政策に真っ向から反対するAfD(ドイツのもう一つの選択肢)が大躍進を遂げた。ドイツでは得票率5%以上の政党にのみ議席が配分されるが、AfDは3つの州議会すべてで議席を獲得し、特に旧東独のザクセン・アンハルト州では25%近い得票率で第2党となって存在感を示した。
◆AfDの大躍進は、今回の州議会選挙では各州それぞれの政策課題よりも難民政策が大きな争点となったことを示唆している。メルケル首相の「寛容な」難民受け入れ政策に対しては、同首相のCDU(キリスト教民主同盟)やその姉妹政党のCSU(キリスト教社会同盟)内からも厳しい批判の声が高まっているが、AfDは難民政策への不満や批判の受け皿となったのである。
◆ただし、ドイツ国民の多数派がメルケル首相の難民政策を否定しているとまではまだ言えないだろう。AfD以外の既成政党は総じて議席数を減らしたが、バーデン・ビュルテンベルグ州の与党第1党の緑の党は議席数を増やし、また、ラインラント・プファルツ州の与党第1党のSPD(社会民主党)の議席数は若干の減少にとどまった。この両党の党首はメルケル首相の難民政策を基本的に支持している。旧西独の2つの州議会選挙でもAfDが躍進したが、一方でこれまでの政治の継続も選択されたのである。
◆今回の3州議会選挙は、2017年9月に行われるドイツ総選挙の行方を占うものとして注目されていた。メルケル批判を強めるCSUは同首相の難民政策が否定されたとさっそく気勢を上げたが、むしろ、CSUによるメルケル首相批判に象徴される与党内のごたごたがドイツ国民の既成政党に対する失望に拍車をかけたと考えられる。総選挙までの残り1年半で求められているのは、既成政党がAfD躍進という警告を無視せずに、結束して場当たり的ではない難民対策を打ち出し、無制限で無節操な難民受け入れが行われているとの国民の不安を低減させることであろう。
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