原油安と低インフレが引き起こす金融市場への副作用

警戒されていたのはECBの2%弱インフレ目標の引き下げ

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2016年01月25日

サマリー

◆年明け以降進む原油安と中国経済の減速を巡る不安から先進国、新興国問わず主要株式市場は大きく下落した。ただし実体経済と金融市場が完全にリンクする訳でなく、株式市場暴落が即ち世界経済の減速を意味するものではない。同様に、原油価格の下落は非資源国にプラスで資源国にマイナスとステレオタイプで結論づけることは一概には出来ない。


◆原油価格下落に歯止めを掛けるために、OPECとロシアとの協調減産が市場では期待されていた。しかし当面は、経済制裁解除によるイランの国際市場復帰の増産に押されて産油国間での市場シェア拡大の競争が過熱し双方一斉に増産しかねず、減産シナリオは想定しづらいとの見方が優勢となる。


◆OPECの雄であるサウジアラビアは、過去最大規模の財政赤字に直面しており、現在のペースで外貨準備の切り崩しがつづけば、ドルペッグ制廃止の可能性は十分にある。また1998年のアジア通貨危機の際、外貨準備が枯渇し対外債務の約10分の1まで落ち込んだことで、ルーブルの切り下げにまで追い込まれたロシアの二の舞となる危険性もはらむ。


◆2016年1月21日、欧州中央銀行 (ECB) は定例理事会を開き、政策金利である主要オペ金利(短期買いオペ:売出し条件付き債券買いオペ=レポ)を0.05%に、また中央銀行預金金利をマイナス0.3%と据え置いている。ドラギ総裁は、足元の原油安に伴うマーケットの混乱を受けて、次の理事会(3月10日開催予定)で、追加緩和を検討することを示唆した。


◆今回の理事会で警戒されていたのは、インフレ目標(インフレ・ターゲット)の引き下げであろう。昨年度の実質GDP成長率の上ブレや、足元の銀行貸出調査結果で一段の企業貸し出し需要増が予想されている状況を見ると、無理に期限内に2%弱の目標の達成にこだわる必要はないのではという議論がシティで広がりつつある。

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