サマリー
◆年明け以降進む原油安と中国経済の減速を巡る不安から先進国、新興国問わず主要株式市場は大きく下落した。ただし実体経済と金融市場が完全にリンクする訳でなく、株式市場暴落が即ち世界経済の減速を意味するものではない。同様に、原油価格の下落は非資源国にプラスで資源国にマイナスとステレオタイプで結論づけることは一概には出来ない。
◆原油価格下落に歯止めを掛けるために、OPECとロシアとの協調減産が市場では期待されていた。しかし当面は、経済制裁解除によるイランの国際市場復帰の増産に押されて産油国間での市場シェア拡大の競争が過熱し双方一斉に増産しかねず、減産シナリオは想定しづらいとの見方が優勢となる。
◆OPECの雄であるサウジアラビアは、過去最大規模の財政赤字に直面しており、現在のペースで外貨準備の切り崩しがつづけば、ドルペッグ制廃止の可能性は十分にある。また1998年のアジア通貨危機の際、外貨準備が枯渇し対外債務の約10分の1まで落ち込んだことで、ルーブルの切り下げにまで追い込まれたロシアの二の舞となる危険性もはらむ。
◆2016年1月21日、欧州中央銀行 (ECB) は定例理事会を開き、政策金利である主要オペ金利(短期買いオペ:売出し条件付き債券買いオペ=レポ)を0.05%に、また中央銀行預金金利をマイナス0.3%と据え置いている。ドラギ総裁は、足元の原油安に伴うマーケットの混乱を受けて、次の理事会(3月10日開催予定)で、追加緩和を検討することを示唆した。
◆今回の理事会で警戒されていたのは、インフレ目標(インフレ・ターゲット)の引き下げであろう。昨年度の実質GDP成長率の上ブレや、足元の銀行貸出調査結果で一段の企業貸し出し需要増が予想されている状況を見ると、無理に期限内に2%弱の目標の達成にこだわる必要はないのではという議論がシティで広がりつつある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
米国大手小売店の決算にみる、DEI施策の取り下げと売上高・株価の関係
2025年06月06日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日