欧州の地政学的リスクと難民問題の見通し

2016年は大荒れの予感

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2016年01月19日

サマリー

◆2015年12月17、18日にブリュッセルで行われたEUサミットは、難民問題の協議に加えて英国とEUとの関係性の再検討を議論する場となった。当初は交渉決裂も予想されていたものの、EU連合と英国がこれ以上密接な関係を避けることや、英国がユーロ圏からの不利益を被らないことなど、いくつかの主張に関しては概ね合意に至っている。ただし、英国側が最重視するEUからの移民抑制については、一部合意されたが最終結論には至ってない。


◆ドイツのメルケル首相は、パリ同時多発テロ以降も人道的側面から積極的な難民受け入れ姿勢を見せていた。このため、2016年も制御不能な難民流入が続く可能性が指摘されており、内外問わずメルケル首相は厳しい批判にさらされていた。しかしながら、12月31日にドイツのケルン中央駅において発生した、難民と思われる群衆の集団女性襲撃事件を機に、世論に押される形で、難民受け入れ方針に対する方針の転換を打ち出している。


◆2016年1月10日、スペイン・カタルーニャ州独立支持派選挙連合ジェンツ・パル・シィ(英語名Together for Yes)は新知事にカルレス・プチデモン氏を指名、カタルーニャ議会が賛成多数で承認、3ヵ月以上空席であった知事職がようやく決定した。これにより、独立推進派にとって大きな打撃とされる再選挙は回避され、新知事は政権公約であるカタルーニャ州の18ヵ月内(2017年春)の独立に向けて動き始めた。


◆2015年12月20日にスペイン国政選挙が行われて、ラホイ首相率いる国民党(PP)が第1党の座を守ったものの、過半数を確保できず未だに連立先のパートナー探しに苦労している。今回のスペイン国政選挙では、カタルーニャ州の一方的な独立も選挙の争点の一つとなっていた。カタルーニャ州議会では独立賛成派の連立協議が成功裏に終わり、独立に向けて着実に動きだしている一方、国政は収束する気配を見せていない。

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