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市場を裏切ったECBの追加緩和

バランスシート調整を迫られる南欧諸国への効果は未知数

2015年12月04日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆2015年12月3日、欧州中央銀行(ECB)は定例の理事会を開き、下限金利である中銀預金金利を0.1%ポイント引き下げマイナス0.3%にすると発表した。この金利引き下げにより、ECBの量的緩和策(QE)である拡大資産購入プログラムは、現行マイナス0.2%以下の金利水準となっている独・仏等の国債購入が可能となった。


◆一方、月額600億ユーロの購入金額の拡大など、購入ペースを加速させる決定が無かったことや、中銀預金金利の引き下げ幅も、より大きいものが期待されていたため市場は大きく失望した。その結果、ドラギ総裁による記者発表の直後から(一時は4月以来の最安値を付けていた)ユーロは買われ主要通貨に対して全面高となり、ユーロ圏各国の株式は軒並み売られて大きく下落する展開となった。


◆現行QEの手法に弊害も多く指摘されつつある。QEの効果を高め、景気回復が著しいドイツ国債の過剰購入を防ぐ上でも、ECBへの出資比率(キャピタル・キー)に応じた買い入れ制限を撤廃すべきであろう。景気低迷にあえぐドイツ以外の他のユーロ圏諸国の国債購入を優先する仕組みを導入した方が賢明ともいえる。


◆全会一致とならなかった今回の理事会は、ドラギ総裁がこれ以上の緩和拡大を阻止したいドイツ等への配慮を一応は滲ませた内容ともいえる。その反面、本質的な問題を抱える南欧諸国への配慮に欠ける決定であったことには一抹の不安を覚える。バランスシートだけを見れば南欧諸国の不良債権処理は当面続くことが予想され、デフレスパイラルに陥り日本化が進む可能性も未だ否定しきれない。ユーロ圏の本当のバランスシート調整は、これから本格化することを見据えた上で、市場変化に応じ、柔軟性を持った金融政策をECBには期待したい。

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