欧州で広がる金融政策のハト派マインド

米国の利上げ観測を横目に、ハトがハトを呼ぶ欧州

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2015年11月12日

サマリー

◆2015年11月5日、BOEのカーニー総裁は、インフレーション報告書発表の会見の場で、突如、QE拡大や利下げなど金融緩和への方向性を示した。米国に次ぐ「利上げ国」と目されていた英国が、2016年以降も金融緩和継続を一転して宣言したことは市場の驚きを呼び、直後に通貨ポンドは急落した。


◆ただし、英国国内需要は堅調であり、企業の投資意欲も高い。米連銀(FRB)の政策次第では、BOEが政策金利を想定より早く引き上げる可能性も未だ残っている。カーニー総裁は、7月に2015年末~2016年初にかけて利上げする可能性について言及するなど、シティでは一貫性の無い発言に対する不信感も抱かれはじめ、現時点では、利上げ時期(2016年第1四半期から第2四半期)に変更はないとする見方が優勢である。


◆2015年10月22日のECBの定例理事会では、ドラギ総裁による次回12月の理事会での追加緩和の方向性に関する発言が注目された。ECBが更なる緩和策をとることで、非ユーロ圏諸国でもマイナス金利を拡大させる状況が鮮明となっている。英国では9月にBOEのチーフエコノミスト、ハルデーン氏が演説の中で、史上初となるマイナス金利の導入に触れるなど、先にマイナス金利を導入しているスウェーデンやデンマーク等に追随する動きが見られる。


◆ただし、マイナス金利は、総資金利鞘の低下により欧銀の収益確保をさらに困難にさせる事態を招く。また量的緩和の両立については意見が分かれており、否定的な見解を示す中央銀行も少なくない。ユーロ圏の10月の失業率は10.8%と低水準に留まり、就業率も上昇するなど着実に雇用環境が改善しつつある状況から、ドラギ総裁のハト派のスタンスを疑問視する声も出てきている。

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