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遠のく利上げの副作用

英国では駆け込み住宅購入が過熱

2015年09月17日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆FRBのイエレン議長に続き、2015年7月にはBOEのカーニー総裁も近い将来の利上げを示唆し、シティでも早期実施の観測が一時勢いづいていた。ただし、各国中央銀行を悩ます、低インフレの状態が英国においても顕在化しており、BOEのインフレ改善見通しに対する見方は冷ややかに受け止められている。今週に入りシティでは、米国の年内利上げコンセンサスに対し、英国の利上げは2016年第2四半期以降と、当初の観測時期に回帰する声が増えつつある。


◆英国では、利上げ前に良い条件で融資を受けようとばかりに、住宅購入に拍車がかかっている。当面、超低金利の継続を予想する投資家も多く、5年固定住宅ローン金利が過去最低となる3%を割り込む水準まで低下している。日本の様な長期固定の住宅ローンが一般的でない英国では(多くが5年以下)、利上げによる住宅市場への影響が大きいとされる。


◆超低金利に加えて、政府主導の住宅購入支援策に伴う制度的要因により、住宅購入を過熱させている側面もある。特に2015年3月に発表され、この秋から開始されるHelp to buy ISA スキームは、価格高騰に悩む英国での住宅購入支援スキームの一つとして期待されると同時に住宅価格の高騰につながるとの指摘が絶えない。


◆QE、景気回復、超低金利を実現した現在でも低インフレの状態から抜け出せないのは英国だけでなく、日米欧のいずれの中央銀行に共通する悩みであろう。QEの成果は通貨安誘導と割切ることで、インフレターゲットを達成する概念も一旦は横に置く覚悟も必要といえるだろう。各国とも利上げに踏み切っても、緩やかに行うのであれば、歴史的な低金利水準は当面は継続されることになる。利上げを先延ばしすることが株式市場の不確実性となりつつある今、利上げの早期実施を期待する声がシティでは高まりつつある。

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