サマリー
◆約1カ月に及んだ「ギリシャ危機」は、ユーロ圏やIMFによる第3次財政支援の枠組みが合意されたことでとりあえず収束へと動き出した。一連の混乱でギリシャ経済は大きな打撃を被り、財政再建だけでなく、景気回復が喫緊の課題となる。一方、ギリシャを除くユーロ圏は1-3月期の前期比+0.4%成長に続き、4-6月期も消費主導で堅調な景気回復が継続したと推測される。なお、ユーロ圏の銀行による民間企業向けの貸出にようやく拡大の兆しが出てきた。銀行貸出増はECBの金融緩和政策がまさに目的としてきたことであり、ユーロ圏の消費拡大が投資拡大に結び付き、より裾野の広い景気回復が実現されるか大いに注目される。ユーロ圏の消費者物価上昇率は5月の前年比+0.3%のあと、6月は同+0.2%と低水準にとどまっている。ユーロ安を背景に輸入物価が上昇に転じてきたとはいえ、ECBが目標とする「前年比+2.0%をやや下回る」消費者物価上昇率を達成できる見通しとなるのは、2016年になってからと予想される。ECBは現在の資産買取プログラムを計画通り遂行することに注力しよう。
◆英国の2015年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は前期比+0.4%、前年比+2.9%となり、2次推計値の同+0.3%、同+2.4%からそれぞれ上方修正された。需要項目別で上方修正されたのは消費と投資であり、内需主導の景気回復パターンに変更はない。内需主導で前年比+3%前後の高い成長を続ける英国は、米国に続いて利上げに転じる可能性が高いが、米国同様、インフレ関連指標はまちまちで、利上げ開始のタイミングを予想するにはまだ材料が十分ではない。賃金上昇率は加速しつつあるが、他方でポンド高による輸入物価下落効果が大きく、消費者物価上昇率は前年比横ばいで推移している。BOE(英中銀)から利上げに対する言及が増えてきているが、その議論が始まるのが秋以降で、実際の利上げ開始は2016年に入ってからとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日