サマリー
◆ギリシャに最後の審判の日が近づいている。7月9日の夜にユーログループのダイセルブルーム議長の報道官はギリシャ側の新改革プランを受理したとの声明を発表した。今回提出された新改革案は、7月12日のEU首脳会合にて協議され、債権団が受諾するか否かでギリシャがユーロ圏に残留できるかが決まる。
◆ギリシャの今後についてユーロ圏各国の間では意見が分かれている。ドイツは信頼に足る改革案が提示されない限り合意はないとし、ユーロの終焉につながるとの恐れから無条件の債務減免は選択肢にないと明言している。一方で、フランスのヴァルス首相はギリシャのユーロ残留のためにできることはすべて行うとし、ギリシャの新改革案の調整も手助けした模様だ。
◆最終的に、Grexitを回避しハードデフォルトの道を避けるためには、メルケル首相がギリシャのユーロ残留のためにどれだけ譲歩するかという政治的な判断に掛かっていると言っても過言ではない。7月7日のユーロ圏首脳会合で、ギリシャ側の債務減免の主張をある程度は排除しない姿勢を見せていただけに期待は大きい。
◆万が一、チプラス政権の要求を全面的に受け入れ、多くの債務減免を伴った形でギリシャのユーロ残留が決まった場合(チプラス政権の完全勝利のソフトランディングシナリオ)、債務負担等の大小で不公平感が生じ、ユーロ圏諸国は二分される可能性がある。一方、Grexitが起こり、それが仮に成功した場合、周縁国の反緊縮政党を力づけることになり、政権交代に至らないまでも発言力が強まることでユーロ分裂の危機につながる恐れもある。このため、どちらに転んでも、ドイツは難しい舵取りを迫られることになる。
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