サマリー
◆7月5日(日)のギリシャの国民投票は、債権者側(EU、ECB、IMF)が提示した緊縮財政策の受け入れについて「反対」61.31%、「賛成」38.69%となった。この結果は国民に「緊縮財政反対」に投票するよう呼びかけてきたギリシャ政府の政治的な勝利である。ただし、この国民投票が、ギリシャ政府の主張してきたように、債権者との交渉を有利なものとすることに貢献するかは大いに疑問である。「緊縮財政反対」との立場を堅持せざるを得なくなったギリシャ政府は、次の公約である「銀行窓口再開」をどう実現させようとしているのか、その道筋が見えてこない。
◆7日(火)に緊急開催されたユーロ圏財務相会合において、ギリシャ側が予告していた「新たな改革案」は提示されず、そのため、続いて開催されたユーロ圏首脳会議ではギリシャの第3次支援に関する話し合いは開始されなかった。ユーロ圏首脳はギリシャに9日(木)までに長期的な改革計画を提示することを求め、それを受けて11日(土)にユーロ圏財務相会合を、12日(日)にユーロ圏首脳会議とEU首脳会議を開催するとの日程を発表した。ギリシャ側は7月末までの債務返済を乗り切るためのブリッジ・ローンの設定と、ECBのELA増額を要請したが、ユーロ圏側はギリシャが新たな改革計画を提示することがこれらの決定の大前提との姿勢を崩していない。
◆ギリシャの銀行窓口閉鎖、資本規制、証券取引所の閉鎖という異常事態は、国民投票前には6日までの予定であったが、7日に再開できようはずはなく、少なくとも8日までは閉鎖継続となった。これに伴い、売上代金を回収できず、給与の支払いができない、仕入れに支障をきたすなど影響が広がり、それが主力産業の観光業にも及びつつある。債権者側のみならず、ギリシャ政府にとっても、この異常事態を早急に打開する必要があるが、そのデッドラインは7月12日と考えられる。
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