サマリー
◆今後のギリシャ情勢で注目すべきは、国民投票以降の国内の動向であろう。今回の国民投票では、ユーログループが第2次金融支援プログラムの継続条件として示した(緊縮策続行の)改革案の受け入れの賛否が問われる。
◆改革案受け入れ“No”が支持されると、自動的に債権団の支援延長を拒否することになり、結果的に国外への資本逃避がさらに加速する。これを抑制するためにも、ギリシャ政府は国民投票後すぐにでも銀行預金を凍結し、対外債務の支払いを停止することが必要となる。これは自ら債務不履行(デフォルト)を宣言することと同義となり、ギリシャの真のデフォルトはこの瞬間となることが想定される。
◆頑なに債務減免(ヘアカット)に応じない債権団に対して改革案を受け入れ(Yes)、ユーロ圏に残留したとしても厳しい未来が待っている。多額の債務の前に続く無期限の資本規制、債務減免の引き換えに債権団主導の銀行再編など過酷な条件が突きつけられる追加支援が実行されたとしても、共通通貨ユーロの構造上の問題点が変わらなければ、数年後に同じ問題を引き起こす可能性は極めて高い。即ち、ユーロ圏から強制的に締め出されるリスクは残り続けることとなる。
◆ギリシャへのIMFの対応のまずさを指摘する声も高まっている。7月2日にIMFから公表されたギリシャ債務に対する報告書では、IMFは従来からギリシャの債務返済は不可能であることを認識しており、今後3年の間に破綻を回避するためには、少なくとも500億ユーロ相当の債務減免が必要となる内容を示した。今回の報告書で想定された債務減免額に対しても、納税者の反対を恐れるユーロ圏の各国首脳が抵抗することは想像に難くない。そうなると、(たとえ国民投票で“Yes”が選択されたとしても)、7月以降に期待されている第3次支援プログラムなどは最初から合意できる訳がなく“絵に描いた餅”である可能性が高いといえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日