サマリー
◆ギリシャのユーロ離脱が現実となる日が刻一刻と近づいている。支援延長のため、6月14日の夜にギリシャから提出された追加の財政改革案は債権団に一蹴されており、今後も合意に達する見込みが薄いことは容易に想像できる。特に付加価値税(VAT)や法人税の引き上げ等、有権者に聞こえが良い内容に終始し、実効性が危ぶまれる点が多いとされる。
◆現時点で予定されている話し合いの山場となるのは、ルクセンブルクで開催される6月18日のユーロ圏財務相会合である。他方、チプラス首相は6月18日~20日にロシアを訪問し、プーチン大統領とも会談を予定している。今回のロシア訪問では、7月に期限切れとなるEUによる対ロ経済制裁の解除に賛同してロシアからの支援を引き出すと同時に、支援継続に難色を示すEUとの対立姿勢をちらつかせる思惑がある。
◆EU側は、対ロ経済制裁の延長について話し合いが持たれる予定である6月22日のEU外相理事会の前に、ギリシャとの緊急会合を開き(6月21日との報道もあり)、支援協議を打ち切るか緊縮財政を継続するかの判断をギリシャ側に迫る目論見と思われる。
◆最後にギリシャのデフォルトへの審判が下されるのは6月25日、26日に開催されるEUサミットといわれる。6月18日やその後の緊急会合での協議で妥結できなければ、EUサミットの中で最終協議を行いEU側がギリシャへの支援継続を終了する決断を下す可能性が高い。追加的な協議がその後も実施される可能性もあるが、事実上6月25日~26日の協議が決裂すると、(72億ユーロの支援金が得られず)6月30日の第2次支援プログラムの延長期限を待たずしてギリシャのデフォルトが既成事実化する見込みである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日