土壇場のギリシャ問題、最終合意ならず

QEと規制強化でポートフォリオが国債に集中 ギリシャ情勢の今後の見通し

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2015年06月04日

サマリー

◆ギリシャの債務再編問題が大詰めを迎えている。難航する72億ユーロの第2次金融支援の最終合意に向け、6月1日にギリシャのチプラス首相は、新たに年金支給の抑制策を含む新改革案を債権団に提示することで譲歩を求めた。一方、債権団側もプライマリーバランスの対GDP比の黒字目標を1%未満に引き下げるなど、新たな譲歩案を提示し協議が続けられていた。


◆未だ合意に至らないことを踏まえて、6月3日の夜、ギリシャのチプラス首相と欧州委員会のユンケル委員長およびユーログループのダイセルブルーム議長の夕食会談がブリュッセルにて開催された。当初から市場関係者の間で予想されていたように、結局は合意には至らなかったが、ユーログループのダイセルブルーム議長は、会談終了後、数日中に協議を再開する方針を示している。


◆ドラギ総裁は定例理事会の会見で、超低金利であるがゆえに(VaRショック等で)国債市場のボラティリティが増大することに慣れる必要があると再三繰り返し、QE下であるため現在の金利水準の変動幅は許容範囲内であると主張した。ただし、現在の欧銀のポートフォリオは、今回のQE実施以前から、ユーロ圏の国債へ過度に傾斜した投資が進み、リスク分散が効いておらず、一旦、大きなショックがあった場合には南欧諸国だけでなく、ドイツやフランス国債の利回り急騰に直面する可能性も想定される。


◆特にリーマン・ショック以降、規制強化により銀行の自己ポジションでの投資が制限されているため、欧銀はもちろんのこと投機筋でさえも、低リスクである国債でのポートフォリオに集中しているケースが多い。分散化されていない投資スタイルは平時には問題ないが、再度、危機が到来してストレスがかかったときに想定以上にボラティリティが増大する可能性が指摘される。

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