サマリー
◆ギリシャの債務再編問題が大詰めを迎えている。難航する72億ユーロの第2次金融支援の最終合意に向け、6月1日にギリシャのチプラス首相は、新たに年金支給の抑制策を含む新改革案を債権団に提示することで譲歩を求めた。一方、債権団側もプライマリーバランスの対GDP比の黒字目標を1%未満に引き下げるなど、新たな譲歩案を提示し協議が続けられていた。
◆未だ合意に至らないことを踏まえて、6月3日の夜、ギリシャのチプラス首相と欧州委員会のユンケル委員長およびユーログループのダイセルブルーム議長の夕食会談がブリュッセルにて開催された。当初から市場関係者の間で予想されていたように、結局は合意には至らなかったが、ユーログループのダイセルブルーム議長は、会談終了後、数日中に協議を再開する方針を示している。
◆ドラギ総裁は定例理事会の会見で、超低金利であるがゆえに(VaRショック等で)国債市場のボラティリティが増大することに慣れる必要があると再三繰り返し、QE下であるため現在の金利水準の変動幅は許容範囲内であると主張した。ただし、現在の欧銀のポートフォリオは、今回のQE実施以前から、ユーロ圏の国債へ過度に傾斜した投資が進み、リスク分散が効いておらず、一旦、大きなショックがあった場合には南欧諸国だけでなく、ドイツやフランス国債の利回り急騰に直面する可能性も想定される。
◆特にリーマン・ショック以降、規制強化により銀行の自己ポジションでの投資が制限されているため、欧銀はもちろんのこと投機筋でさえも、低リスクである国債でのポートフォリオに集中しているケースが多い。分散化されていない投資スタイルは平時には問題ないが、再度、危機が到来してストレスがかかったときに想定以上にボラティリティが増大する可能性が指摘される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日