サマリー
◆ECBが3月9日に開始したPSPP(国債等公的部門の債券買取を通じた量的緩和策)は順調なスタートを切り、ABSなど民間部門の債券買取と合わせて月額600億ユーロの資産買取が進行中である。PSPPを含む過去1年余りのECBの追加金融緩和措置により、ユーロ圏各国で国債利回り低下や銀行の貸出金利低下が進んでいるが、2015年1-3月期の銀行貸出サーベイからは、ユーロ圏の銀行が非金融機関向けの貸出に一段と前向きになり、また、資金需要が増加すると見込んでいることが読み取れる。
◆原油価格下落という追い風を得て、ユーロ圏では消費者信頼感が改善し、消費が拡大傾向にある。2015年1-3月期のGDP成長率も個人消費が牽引役となって前期比+0.4%と堅調な伸びになったと推測される。企業部門の景況感改善はやや遅れているが、金利低下やユーロ安のプラスの効果が徐々に波及してくると予想される。なお、3月のユーロ圏の消費者物価上昇率は前年比-0.1%となり、マイナス幅は縮小したものの、ECBが目標とする「前年比+2%をやや下回る」水準とは大きな乖離が存在する。ECBは資産買取プログラムを計画通り遂行することに注力すると予想される。
◆英国の2014年のGDP成長率は消費と投資の拡大が両輪となって+2.8%と8年ぶりの高い伸びを記録した。原油価格下落、実質賃金上昇率の伸び加速という追い風を得て、2015年も消費主導の景気回復が続くと見込まれる。1月と2月の消費者物価上昇率は原油安とポンド高の影響で共に前年比0%に低下したが、堅調な消費拡大を背景に2015年末までには消費者物価は再び上昇してくると予想される。BOE(英中銀)の金融政策は引き続き、賃金上昇率の動向を見ながら利上げのタイミングを計ることになろう。以上が英国経済見通しのベースシナリオだが、5月7日の総選挙(英国議会下院選挙)が不透明要因である。二大政党である保守党、労働党の支持率が拮抗し、どちらも過半数の議席を得ることが難しいと予想される。他の小政党と組む連立政権となるのか、少数与党政権となるのか、その際、「原点回帰」の傾向がみられる両党の選挙公約がどう政策に反映されるかが注目点となる。
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