サマリー
◆2015年4月15日、欧州中央銀行(ECB)は定例の理事会を開催し、政策金利である主要オペ金利(短期買いオペ:売出し条件付き債券買いオペ=レポ)を0.05%に据え置く決定をした。さらに上限政策金利である限界貸出金利および下限金利である中央銀行預金金利を同様にそれぞれ0.3%、マイナス0.2%と据え置いている。
◆月額600億ユーロの国債買い入れ型の量的緩和策(以下、QE)に関して大きな変更は加えず、当面、現行プログラムを縮小することなく継続することを示した。銀行貸出の増加などドラギ総裁は現行プログラムの成果を強調していたが、QEの恩恵は「アナウンスメント効果」が初期の段階で最も強く現れることが他国で実証されているため、その効果が持続するかは未知数といえる。
◆取り立てて注目点が少ない会見の中、ひと際注目を集めたのが、開始早々、説明中のドラギ総裁の机に突如女性の抗議者が飛び乗りECBへの批判をし始めたことだ。“End ECB dictatorship.(ECBの独裁を止めろ)”と叫びながらドラギ総裁に説明資料と紙吹雪を投げつけるテロリスト紛いの行動に、会場は一時騒然となった。
◆労働市場改革と生産性の向上を求めることには異論はないが、人口約1,100万人の小国ギリシャにこれ以上のプレッシャーは酷ともいえよう。4月24日のラトビアで開催されるユーロ圏財務相会合での、ギリシャの通貨ユーロ離脱の可能性は完全に否定できない。ロシアからの支援を切望するギリシャの姿勢など、新たな地政学的リスクの高まりが注目される中、ユーロ圏の金融政策の枠を超えた調整力がドラギ総裁に求められるといっても過言ではない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日