ECB国債買い入れ型量的緩和は順調にその効果を発揮?

ECBは独裁者と化したのか

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2015年04月16日

サマリー

◆2015年4月15日、欧州中央銀行(ECB)は定例の理事会を開催し、政策金利である主要オペ金利(短期買いオペ:売出し条件付き債券買いオペ=レポ)を0.05%に据え置く決定をした。さらに上限政策金利である限界貸出金利および下限金利である中央銀行預金金利を同様にそれぞれ0.3%、マイナス0.2%と据え置いている。


◆月額600億ユーロの国債買い入れ型の量的緩和策(以下、QE)に関して大きな変更は加えず、当面、現行プログラムを縮小することなく継続することを示した。銀行貸出の増加などドラギ総裁は現行プログラムの成果を強調していたが、QEの恩恵は「アナウンスメント効果」が初期の段階で最も強く現れることが他国で実証されているため、その効果が持続するかは未知数といえる。


◆取り立てて注目点が少ない会見の中、ひと際注目を集めたのが、開始早々、説明中のドラギ総裁の机に突如女性の抗議者が飛び乗りECBへの批判をし始めたことだ。“End ECB dictatorship.(ECBの独裁を止めろ)”と叫びながらドラギ総裁に説明資料と紙吹雪を投げつけるテロリスト紛いの行動に、会場は一時騒然となった。


◆労働市場改革と生産性の向上を求めることには異論はないが、人口約1,100万人の小国ギリシャにこれ以上のプレッシャーは酷ともいえよう。4月24日のラトビアで開催されるユーロ圏財務相会合での、ギリシャの通貨ユーロ離脱の可能性は完全に否定できない。ロシアからの支援を切望するギリシャの姿勢など、新たな地政学的リスクの高まりが注目される中、ユーロ圏の金融政策の枠を超えた調整力がドラギ総裁に求められるといっても過言ではない。

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