欧州経済見通し ECBの金融緩和の有効性

マインドは改善してきたが、実体経済の回復は道半ば

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2015年03月20日

サマリー

◆ユーロ圏の2014年10-12月期のGDP成長率は前期比+0.3%に加速した。内需(個人消費と固定資本形成)と外需が揃って改善しており、唯一、在庫変動が成長率の押し下げ要因となった。原油安、金利低下、ユーロ安が、景気回復の追い風になったと考えられる。消費者と企業の景況感は2015年に入っても改善傾向にあり、ユーロ圏は緩やかな景気回復を続けると見込まれる。2015年の成長率予想を+1.1%から+1.3%に上方修正した。


◆金利低下とユーロ安はECBの一連の金融緩和策によってもたらされている。そのECBは1月22日にPSPP(国債等公的部門の債券買取を通じた量的緩和策)の導入を決め、3月9日に資産買取を開始した。今後はこのECBの資産買取が順調に進むか、金利低下、ポートフォリオ・リバランスなど期待された変化をもたらすか、景気回復を後押しして最終目標である「中期的に安定的な物価上昇」の実現に貢献できるかが注目点となる。3月5日公表のECBスタッフによる景気見通しでは、2015年の消費者物価上昇率が0%に下方修正された一方、2016年は+1.5%、2017年は+1.8%とかなり強気な予想になっている。その前提として2015年~2017年のGDP成長率が+1.5%、+1.9%、+2.1%と加速する予想となっているが、この実現には金融政策だけでは力不足と考える。


◆英国の2014年10-12月期のGDP成長率は前期比+0.5%となり、7-9月期の同+0.7%から減速した。個人消費と政府消費の伸び率が鈍化し、固定資本形成は前期比マイナス成長に転落するなど内需の弱さが目立った一方、輸出は前期比+3.5%と力強く拡大し、純輸出が成長率押し上げに最大の貢献を果たした。これは英国経済としてはかなり珍しい景気回復パターンだが、2015年は原油価格下落、実質賃金上昇率の伸び加速を追い風として、再び消費主導の景気回復パターンに戻ると予想される。

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